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最高裁判所第二小法廷 昭和27年(あ)6178号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人鈴木義男、同河野太郎の上告趣意第一点について。

(一)  受訴裁判所内で行う証人尋問を受命裁判官をして行わしめることは法の認めないところであることは所論のとおりであるけれども、本件所論の場合においては、第一審裁判所は、予め検察官弁護人等訴訟関係人の同意を得た上で、受命裁判官をして証人の尋問をなさしめたものであり、かつ右証人尋問には、被告人弁護人もこれに立会い、しかも、その施行について何ら異議を述べた形跡はなく、また、その後公判において右尋問調書の証拠調が行われた際にも訴訟関係人が異議を述べた事実のないことは記録上明らかであるから、右手続上の瑕疵はこれによって治癒せられたものと解するを相当とする。

(二)  犯罪捜査の衝にあたる巡査が、とくに被疑者の要望を容れて証拠品の押収を取止めた、本件のごとき場合は、刑法一九七条の三にいわゆる「相当ノ行為ヲ為ササルトキ」に該当することは、原判決の説示するとおりである。

よって所論(一)(二)の違憲論は、いずれもその前提を欠くもので採用し難い。

その余の論旨は事実誤認若しくは量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

また記録を精査しても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条三八六条一項三号により主文のとおり決定する。

この決定は、裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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